測定項目について

 

 教育の現場は、教師の様々な力によって成り立っています。

 

 学習項目の意味・用法を分析する力、それを学習者に分かりやすく伝える力、学習者が理解できているかどうか感じ取る力、誤用を捉え的確に指導できる力、効率的な教案を立てられる力などの総合力が一つの授業を作っていきます。

 

 それぞれの力が個別に優れていても、授業の条件や状況に合わせて総合的に活用できなければ現場で実際に使える力とはいえません。

 

 また、一つの授業で展開される教師と学習者のやりとりの一つ一つは、すべて瞬時に終わってしまいます。

 

 ですから、それぞれの力が本当に実際に使える力であるには、そのやりとりの中で瞬時に活用されなければなりません。

 

 現場で実際に教える力は、学習者と現場で触れ合う中で養われる力です。参考書からいくら知識やテクニックを吸収しようとも、それが現場の力として使えるようになるには、学習者との実際のやりとりの中で試行錯誤を繰り返し、自分の体験の中から身につけるようにしなければなりません。

 私たちは、この総合力と臨機応変な対応力を教師の「実践力」と呼ぶことにしました。

 

 「実践力」に含まれる要素を具体的にリストアップするために、まず、全養協加盟機関の実習指導担当教員が集まって、実習の授業で起こった問題点、実習後に実習生に対して述べたコメントや行った指導内容についての情報を持ち寄るところから作業を始めました。

 すると、機関が異なるにもかかわらず、持ち寄った情報のかなりの部分に共通点があることが分かりました。そこで、これらの共通点を分類・整理し、リストを作成し、また、そのリストを教師の実践力に関する文献に照らす等で再分類・再整理を重ねて、「全養協日本語教師検定 測定項目」を作成しました。

 

 これらの測定項目は、別のリストアップ方法を採れば、加えるべき項目も増えてくるでしょう。さらに、今後、教師の「実践力」の研究と共に、当然変更されるべきものです。したがって、このリストは、固定的なものではなく、発展的に変更されていくものとしています。

  教師の「実践力」を詳細に検討していくと、最終的には教師個々人の性格など「人間性」という要素まで行き着きます。確かに、日本語学習者の教師に対する授業評価の中で、教師の「人間性」を重視する声は多くあります。しかし、教師に適した「人間性」のリストアップは、個々の人間の根本的な要素に立ち入ることになり、僭越な行為に思えます。また、リストアップを試みようとしても、「実践力」以上に具体化が難しいものと感じました。そこで、現時点におきましては、 「人間性」については、個々の教師が対応する問題として言及を避けることにしました。ただ、これも授業の成立を支える重要な要素であることは、学習者の教師に対する評価からも明らかです。自分は日本語教師として知識・能力があるのかを考えることはもちろん、人としてどうであるかについても考えていかねばならないでしょう。